前理事長の挨拶

― 世界法学会ホームページ開設にあたって ―

                             藤 田 久 一

このたび、世界法学会は、学会活動を学会員のみならず広く一般の方々にもお知らせし、世界法にかかわる研究や議論をこれまでにも増して一層活性化するために、皆様のご要望にお応えして、ホームページを開設いたします。

  世界法学会は、すでにかなりの歴史をきざんで参りました。最初のきっかけは、第二次世界大戦直後の世界連邦連動に由来するものでした。この運動は、同大 戦末期の原爆の登場により、将来人類の破滅を免れるためには諸国はもはや国家主権を放棄しなければならないとし、世界政府ないし世界連邦を求める運動とし て欧米で盛んになりました。日本でも世界連邦期成同盟の運動が各地に広まり、そのための研究会として発足したものであります。その結果、1965年(昭和 40年)に世界法研究会が初めて開催されました。

 その11年後の1976年(昭和51年)に、世界法学会に改組されました。以来、大会への参加者が次第に多くなり、今日、会員数は400名近くにも及 び、会員には日本の研究者のみならず外国の研究者も含まれています。年一回とはいえ丸一日をかけた研究大会を開催し、研究報告や論説を含む年報を発行して おります(2003年の「世界法学会プログラム」および2002年「世界法年報」は本ホームページ参照)。

  ところで、21世紀冒頭の国際社会の状況は、世界法学会の活動をいっそう促し、かつ必要としているように思われます。最近の多発テロに続くアフガンでの 武力紛争、パレスチナ紛争の激化、イラク戦争などは、21世紀の世界秩序の有り方に問題を投げかけ、あるいは反省を迫っており、こうした状況にある今日こ そ、世界法や世界政府(世界連邦)といった諸問題の研究が以前にも増して必要とされているといえます。

  もっとも、世界法や世界政府の概念に必ずしも統一的な理解があるわけではありません。「現に世界法は存在する」という(田中耕太郎先生のような)見解も ありますが、大方の見方は、それは未だ存在しないものであり、将来の「あるべき法(de lege ferenda)」の問題とみなすものであります。したがいまして、現に「在るもの」、つまり、現存の実定法(国家法や国際法)の分析のみに限定するアプ ローチからはみ出しまたはそれを超えたところに、世界法や世界政府の豊かな発想の世界が展開することになるのではないかとも思われます。現実を踏まえつつ も、こうした未来の、あるべき世界法をめぐる諸問題に怯むことなく積極的に取り組んで研究していくことこそ、混沌とした21世紀の国際秩序ないし世界秩序 の方向性を見極めるためにも不可欠の作業ではないかと思われます。

  世界法学会は、このような世界法をめぐる諸問題への積極的なアプローチを企てていくための、恐らく世界で唯一の学会であり、その研究大会は研究・報告・ 発表の場であります。その意味で、このような企画を世界に先駆けて企てていく使命すら帯びているのではないかと思います。そのために、世界法学会は、世界 中から発信された世界法や世界秩序をめぐる諸思想・諸潮流を取り込むと同時に、世界に向けて発信していく場、いわば(古代アテネの)アゴラのような役割を 果たすことが期待されてくるものと思われます。

  今後とも、会員の皆様、さらに、世界法や世界秩序の問題に関心をもちその研究に取り組んでおられる(世界中の)皆様方の絶大なご鞭撻、ご協力をお願い申し上げます。

                             2003年5月

 

 

【その他の前理事長の挨拶】

・ 廣瀬和子 前理事長挨拶

・ 杉原高嶺 前理事長挨拶